前回の記事で「CBAM(炭素国境調整メカニズム)」の基本を学びました
でも、実際のところ「いくらかかるの?」という疑問が残りますよね。
そして、日本政府は何をしているのか。他の国はどう動いているのか。
今回は、そのあたりを徹底的に調べてみました。
CBAM証書の価格:1トンあたり約1万1600円
2025年6月時点の価格
CBAM証書の価格:1トンのCO₂あたり約69ユーロ(約1万1600円)
これが、2025年6月30日時点での価格です。
「高いの?安いの?」って感じですよね。
価格はどう決まる?
CBAM証書の価格は、EU排出量取引制度(EU-ETS)の価格と連動しています。
EU-ETSは、EU域内の企業が排出できるCO₂の量に上限を設けて、その「排出枠」を取引する制度。
需要と供給で価格が変動するので、CBAM証書の価格も変動します。
つまり、固定料金じゃなく、市場価格なんです。
具体例:実際にいくらかかる?
ちょっと計算してみましょう。
例:鉄鋼製品を100トン、EUに輸出する場合
仮に、その製品の製造で1トンあたり2トンのCO₂が排出されたとします。
100トン(製品) × 2トン(CO₂/製品トン) = 200トンのCO₂
200トン × 69ユーロ = 13,800ユーロ(約232万円)
約232万円のコストが追加でかかる計算になります。
決して安くないですよね…。
日本政府の対応:慎重だけど動き始めてる
現状:「まだ影響は限定的」
日本政府の基本的なスタンスは:
「現時点では、日本企業全体への直接的な影響は限定的」
確かに、現在の対象製品(鉄鋼、アルミ、セメントなど)で見ると、日本からEUへの輸出量はそこまで多くありません。
でも、「だから安心」とは言っていないのがポイントです。
準備は進めている
日本政府も、手をこまねいているわけではありません。
企業への要請:
- 製品ごとのカーボンフットプリント(CFP)の算定体制を整備
- 排出量データの管理体制を構築
- 今後の対象拡大に備える
2025年2月の動き:
CBAM規則の簡素化案が発表されました。
主なポイント:
- 中小企業の免除措置
- 報告義務の負担軽減
- 申告期限の見直し
つまり、「負担を減らしつつ、でも対応はしてもらう」という方向性です。
日本経済界の本音
日本経済団体連合会(経団連)は、かなりストレートに懸念を表明しています。
「CBAMは非関税障壁になるのでは?」
「ルールに基づく自由な国際経済秩序への影響を警戒」
要するに、
「環境対策は大事だけど、これって保護主義じゃないの?」
という疑問を投げかけているんです。
この視点、すごく重要だと思います。
世界の動き:各国それぞれの戦略
CBAMはEUの制度ですが、世界中が反応しています。
🇺🇸 アメリカ:批判しつつ、自分たちもやる
批判:
米国通商代表部(USTR)は、EUのCBAMを「貿易障壁の一つ」として名指しで批判しました。
「アメリカ輸出業者に不公正な負担を強いる」というわけです。
でも、自分たちも導入検討中:
実は、アメリカも自国版CBAMを検討しています。
上下院で複数の関連法案が提出されていて、「外国汚染税」という名前で議論が進んでいます。
つまり、
「EUのやり方は気に入らないけど、似たようなことはやりたい」
という、ちょっと複雑な立場。
環境保護団体からは懸念の声も:
面白いことに、アメリカ国内の環境保護団体は、
「EUのCBAMに対抗するのは良くない。むしろ協力すべき」
と主張しています。
国内でも意見が割れているんですね。
🇬🇧 イギリス:「俺たちもやる!」
イギリスは、2027年から独自のCBAMを導入予定です。
しかも、対象製品はEUとほぼ同じ。
2025年4月の動き:
- 制度概要と法案草案を公表
- 意見募集を実施
EUとの連携も:
イギリスはEUとの協議も進めていて、2028年頃に相互免除が期待されています。
つまり、「お互いの制度を認め合って、二重課税を避けよう」という方向性。
これは賢いやり方だと思います。
🇨🇳 中国:静観しつつ、準備はしてる
中国は、自国版CBAMを導入するという明確な動きはまだありません。
でも、
国内では着々と準備:
- カーボンプライシング制度の整備
- 国内排出量取引制度の構築
- 輸出業者向けの環境対応強化
つまり、「EUに課税されないように、自国で先に対策する」戦略。
これ、実は賢いかもしれません。
なぜなら、
EUに課税で払うより、自国で炭素価格を課した方が、お金が国内に残る
からです。
🇰🇷 韓国:慌てて対応中
韓国政府も、EU CBAM対応に備えて動いています。
- 国内カーボンプライシングの強化
- 産業界との連携強化
- 自国CBAM導入を検討段階
韓国は日本と同じく、製造業が強い国。
だから、かなり真剣に取り組んでいます。
🇦🇺 オーストラリア:調整中
オーストラリアは:
- EU CBAMとの調整を図りつつ
- 国内カーボンプライシング政策を推進
- サプライチェーン排出量管理を強化
独自CBAM導入は、まだ具体化していません。
世界の動きから見えること
各国の反応を見ていて、気づいたことがあります。
パターン1:「批判しつつ、真似する」(米国)
「EUのやり方は気に入らないけど、似たことはやりたい」
これ、正直だなと思いました(笑)
でも、ある意味CBAMの有効性を認めているとも言えます。
パターン2:「協調する」(英国)
「じゃあ俺たちも同じようなことやって、連携しよう」
これが一番スムーズかもしれません。
共通のルールができれば、企業も対応しやすくなります。
パターン3:「先回りして対応」(中国)
「課税される前に、自分で対策する」
実は、これが一番賢い戦略かもしれません。
お金を外に払うより、国内で循環させる。
パターン4:「様子見」(日本?)
「まだ影響は限定的だから…」
でも、準備はしておく。
これで本当に大丈夫なのか、ちょっと心配になります。
私が感じたこと
調べていて、いくつか思ったことがあります。
1. 価格は変動する
CBAM証書の価格(1トンあたり約1万1600円)は固定じゃない。
市場価格なので、今後上がる可能性もあります。
「今は大したことない金額」でも、将来どうなるかわからない。
2. 各国バラバラに動いてる
本来、気候変動は地球全体の問題なのに、
各国がバラバラに制度を作ろうとしてる。
「国際的な調整」がもっと必要なのでは?
3. 日本の「様子見」姿勢が気になる
「影響は限定的」って言葉、何度も出てきます。
でも、対象製品が拡大したら?
そのとき慌てても、遅いんじゃないかな…
4. 企業は本当に困ってる(はず)
政府の発表は割と冷静だけど、
現場の企業は、かなり困ってるんじゃないでしょうか。
次回は、この「企業の本音」を調べてみたいと思います。
まとめ:世界は動いている
CBAMをめぐる世界の動き、想像以上にダイナミックでした。
アメリカは批判しつつ真似しようとして、 イギリスは協調路線で、 中国は先回りして対策して、 日本は…慎重に様子見?
そして、CBAM証書の価格は1トンあたり約1万1600円。
これが高いか安いかは、企業によって違うでしょう。
でも一つ言えるのは、
2026年1月からは、この価格を払わないとEUに輸出できない
ということです。
次回予告
次回は、もっと現場に近い話を書きたいと思います。
「日本企業の悲鳴:CBAM対応、現場は大混乱」
- 実際に困ってる企業の声
- 具体的に何が大変なのか
- 中小企業はどう対応すればいいのか
こんなテーマで調べていきます。
【今回調べてわかったこと】
- CBAM証書の価格は市場連動で変動する
- 日本政府は慎重だけど準備は進めている
- 各国が独自の戦略で動いている
- 国際的な調整がもっと必要かも
【まだわからないこと・次に調べたいこと】
- 企業は実際にどれくらい困ってる?
- 中小企業でもできる対策は?
- カーボンフットプリント、どうやって計算する?
一緒に学んでいきましょう。
※この記事は学習中の初心者が書いています。間違いや補足があれば、ぜひ教えてください!
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